九州大学 先導物質化学研究所 物質機能評価センター
高エネルギーX線回折装置

X-ray Diffraction & Scattering

高エネルギーX線回折装置

Rigaku · SmartLab HE ·2026年導入

筑紫キャンパス

Mo / Ag の高エネルギー線源を活用し、ラボでの全散乱(PDF)解析、 -190〜+600 ℃ の温度可変その場測定、全固体電池やラミネートセルの オペランド測定など、汎用機では難しい先進測定をカバーするXRDです。

設置場所
筑紫キャンパス / 南棟 109号室(西)
担当者
松本 泰昌

基本仕様

X線源
回転対陰極、9 kW(Agは6kW)、Cu / Mo / Ag を交換使用可能
検出器
HyPix-3000HE(Cu/Mo/Ag 対応、0/1/2D)、D/teX Ultra250
温度範囲
-190〜+600 ℃(Anton Paar TTK 600、真空時)
オプション
  • CBO(Cu)/ CBO-E(Mo・Ag 集光ミラー)
  • 全散乱用キャピラリ回転ステージ(最大 120 rpm)
  • 全固体電池 加圧充放電ステージ(1 kN 以上)
  • 透過ラミネートセル マッピングステージ
  • 大気非暴露搬入用 前室(ANTECHAMBER)

装置概要

高エネルギーX線回折装置は、Mo(モリブデン)/Ag(銀)の高エネルギー(短波長)X線源 を活用し、汎用的なCu線源XRDでは難しい 全散乱測定によるPDF(Pair Distribution Function)解析 を中心に、液体窒素を用いた極低温〜600℃の温度可変その場測定 や、電池材料のオペランド(その場)測定 にも対応するXRD装置です。

X線の波長は使用するターゲット元素によって決まり、Mo-Kα や Ag-Kα は Cu-Kα よりも短波長(高エネルギー)です。短波長のX線を使うと より広いQ領域(散乱ベクトル範囲)まで測定 でき、また 試料による吸収が小さく なるため、PDF解析・透過配置でのバルク試料測定・電池セルなど厚みのある試料の測定で大きな利点があります。本装置は Cu / Mo / Ag の3種類のターゲットを交換して使用 でき、研究目的に応じて最適な波長を選択できます。

ステージ面では、キャピラリ回転機構付きの全散乱用ステージAnton Paar TTK 600 による -190℃〜+600℃の温度可変ステージ全固体電池の加圧充放電セル透過ラミネートセルの面内マッピングステージ など、その場(オペランド)測定向けの拡張が充実しています。大気非暴露の前室(ANTECHAMBER) も備えており、グローブボックスから取り出した空気・水分に弱い試料を曝露なしで測定室まで搬入できます。

検出器は、Cu-Kα だけでなく Mo-Kα/Ag-Kα の高エネルギーX線にも対応する HyPix-3000HE(0/1/2次元対応のフォトンカウンティング検出器)と、ストリップ幅100μm以下の高速・高ダイナミックレンジ検出器 D/teX Ultra250 を装備し、高速スクリーニングから高精度測定まで一台でカバーします。

可能な測定とアタッチメント

全散乱測定によるPDF解析(Mo / Ag 線源)

PDF(Pair Distribution Function:二体分布関数)解析は、結晶ピークだけでなく散漫散乱を含むX線散乱データ全体(全散乱データ)をフーリエ変換 することで、試料中の原子間距離分布をそのまま実空間で可視化 する手法です。長距離秩序をもたない非晶質・ナノ結晶・局所構造(短距離秩序)を直接議論できる ため、ガラス・触媒・電池材料・MOFなどの解析に欠かせません。

PDF解析には広いQ範囲のデータが必須で、Cu-Kα では到達Q値が不足するため、Mo-Kα/Ag-Kα のような短波長X線が標準的に使われます

  • Mo / Ag 線源と CBO-E(集光ミラー) の組み合わせで、PDF解析に求められる高品質な全散乱データを取得。
  • 透過集光法用の キャピラリ回転機構付き試料ステージ(最大120rpm)を装備し、粒子配向の影響を低減。信頼性の高いPDFデータを得られます。
  • 多目的X線回折装置との ステージ共用 にも対応。
  • 解析ソフトウェア SmartLab Studio II のオプションにより、RMC(Reverse Monte Carlo)解析 にも対応。実験データに整合する原子配置モデルを構築でき、非晶質・ナノ結晶材料の構造をより詳細に議論できます。

中低温 温度可変ステージ(Anton Paar TTK 600)

材料の 相転移・熱膨張・酸化還元挙動・水素吸蔵放出 などを温度変化下で観察する、温度可変その場測定用ステージです。液体窒素を利用した極低温から600℃の高温まで をひとつのステージでカバーします。

  • 大気・不活性ガス(N₂, He)・真空の各雰囲気に対応。
  • 真空中で -190℃〜+600℃、N₂/He雰囲気で -150℃〜+450℃ の幅広い温度域に対応。
  • 2θ/θ連動測定 10°〜150°以上、深さ0.8mm/0.2mm/フラットの試料ホルダ+キャピラリ試料台を装備。
  • 大気非暴露の前室(ANTECHAMBER) を備え、グローブボックスから取り出した空気・水分に弱い試料を大気曝露なしで測定室まで搬入 できます。電池材料、有機半導体、水素貯蔵材料など、雰囲気管理が必要な試料の測定に最適です。

全固体電池用 充放電ステージ

全固体電池の電極材料は、加圧条件下でしか正常に動作しない ものが多く、また充放電に伴う相転移や劣化機構を理解するには 動作中の構造変化を直接観察(オペランド測定) することが重要です。本ステージはこのような全固体電池研究のニーズに応えるものです。

  • φ10mm試料サイズ、1kN以上の加圧、2θ/θ連動で 100°以上の測定範囲 に対応。
  • 加圧条件下での充放電サイクル中の構造変化 を、ラボレベルでオペランド測定可能。
  • 電極活物質の相転移・体積変化・副反応生成物の検出などに活用できます。

透過ラミネート電池セルステージ

実用に近い形態の ラミネートセル をそのまま測定できるステージで、電池の実セル評価や面内不均一性の評価に対応します。

  • X軸 ±40mm/Y軸 ±25mm以上のソフトウェア制御ステージ。
  • セル内の 任意位置を狙ったマッピング測定 で、電極面内における反応の不均一性を可視化。
  • その場充放電中の構造追跡にも対応。

高速・高ダイナミックレンジ測定(D/teX Ultra250 + 0Dモノクロ)

D/teX Ultra250 は 0次元・1次元測定に対応する高速・高ダイナミックレンジのストリップ検出器 で、HyPix-3000HE との使い分けにより 高速スクリーニングから高分解能精密測定まで を一台でカバーします。

  • 0Dモノクロ(BB/PB両対応)により、不要な蛍光X線・連続X線(白色成分)を除去 した高S/N測定が可能。
  • ルーチンの粉末測定や時分割でのオペランド測定に有用。

研究分野別の主な活用シーン

研究分野主に活用する測定
ガラス・非晶質材料Mo / Ag 線源による全散乱PDF解析
ナノ結晶・局所構造解析Mo / Ag 線源による全散乱PDF解析(キャピラリ回転ステージ)
触媒・MOF全散乱PDF解析、温度可変その場測定(TTK 600)
厚みのあるバルク試料・実セルMo / Ag 線源による高透過力を活かした透過配置測定
相転移・熱挙動を伴う材料全般TTK 600 による中低温〜高温その場測定
水素貯蔵材料・機能性材料温度可変その場測定(-190℃〜+600℃)、雰囲気制御測定
リチウムイオン電池(正極・電解質)Mo / Ag 線源による高Q領域測定、透過ラミネートセルマッピング、温度可変その場測定
全固体電池加圧充放電ステージによるオペランド測定、ラミネートセル評価、大気非暴露搬入

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